ポストプロダクション
映像業界の方でないとあまり聞かない言葉かもしれません。
聞いたことをある人もブラックなイメージが強かったりする所かも…
しかしポストプロダクションはテレビや映画だけにとどまらずMVや駅などにあるデジタルサイネージと呼ばれる広告など私たちが目にする映像に深く関わっています。
映像業界に就職したい人、転職したい人にポストプロダクションがどんな所なのか教えていきます。
ポストプロダクションとは
ポストプロダクションは一言で
「映像の最終仕上げ」
を行うところです。
- 映像編集の最終仕上げ
- 音声、ナレーション、効果音の最終仕上げ
といったところを各部署に分かれて行っています。
映像編集
ポストプロダクション内で映像編集に関わるところでは
- カラーグレーディング
- オフライン編集
- オンライン編集
といった業務があります。
ここからはそれぞれの業務を詳しく説明していきます。
カラーグレーディング
カラーグレーディングは文字通り
映像素材の色調整を行います。
カメラマン、ディレクター立ち会いのもと、映像素材の色を細かく決めていきます。
ポストプロダクションでは編集室は基本的に薄暗いです。
それは何故かと言うと
映像の色を確実に見る
ためだからです。
そういった性質のためカラーグレーディングの編集質は
他の編集質よりも薄暗くしていたりします。
(私の勤めていたポストプロダクションではそうでした)
オフライン編集
オフライン編集とは
仮編集
のことです。
映像素材を加工しない状態または簡単な加工状態で編集を行います。
オフラインで何パターンか出して検討するというのが一般的です。
カラーグレーディングや合成を行う前にオフラインで
どの素材を編集で使うか
を決めておくことで無駄な作業が減ります。
またCGを外注する際にも
どのくらいの尺(時間)で必要なのか
ということがわかるのでオフラインは重要です。
オンライン編集
オンライン編集はオフライン編集のデータを基に加工に特化した編集ソフトで高度な加工、編集を行う
映像編集の最終仕上げ
を行うところです。
Flameというソフトを使うのがポストプロダクションでは一般的です。
編集、コンポジット、VFX、カラーグレーディングと一つの環境で高度に行えるソフトで映像の最終仕上げを行っています。
昔は合成やVFXは高価なソフトを扱っているポストプロダクションで行っていましたが
近年ではAdobe製品を始めとした個人でも購入できるソフトのレベルが上がっているので
わざわざポストプロダクションでオンライン編集を行うということがなくなってきています。
リニア編集とノンリニア編集
ポストプロダクションではリニア編集もノンリニア編集も行います。
リニア編集って?ノンリニア編集って?という方にもわかるように説明すると
リニア編集=業務用ビデオデッキとテープで編集
ノンリニア編集=パソコンの編集ソフトで素材はデータで編集
今ではパソコンで編集するのが当たり前ですが
昔はスイッチャーと呼ばれる機材と編集機で複数の業務用ビデオデッキで編集するのが当たり前でした。
今でもテレビ局への納品が業務用テープのHDカムの場合があるのでリニア編集は行われています。
業務用ビデオデッキやスイッチャーを開発していたSONYが販売を停止し新しい規格のXDカムに移行したことでノンリニア編集が一般的になりつつあります。
音声編集を行うMA
MAとはMulti Audioの略で音楽、効果音、ナレーションを映像につけるところです。
テレビ番組では複数のタレントの音声を調整したり、笑い声や拍手を足したりしています。またナレーションを収録するもMAで行います。
映像編集はPremiere ProやFinal Cut Pro Xといったソフトが個人でも扱える価格になってり、個人で習得ができるスキルでもありますが
MAのような音声編集は個人ではなかなか習得できませんのでMAの人材は貴重です。
デジタイズとOAプリント
映像編集と音声編集以外の仕事もあったりします。
それはデジタイズとOAプリントです。
デジタイズとは磁気テープでの収録素材をノンリニア編集するために
データに変換する作業です。
映像編集の準備で編集室で行う場合もありますが、デジタイズだけを依頼されることがあります。
OAプリントはオンエアプリントと言って各テレビ局に納品するために
コピーを行う作業です。
一つのCMを全国のテレビ局に納品するのに100近くコピーすることもあるのですが
これからはデータ収録を行い、データ納品になっていく流れなので今後はなくなっていく仕事かもしれません。
ポストプロダクションの働き方
ポストプロダクションは制作プロダクションが編集室と編集者を借りるという形で成り立っています。
編集室は短いもので半日から長いもので数週間借りて作業を行います。
メインとアシスタント
編集者はメインとアシスタントの2名がつくことが一般的です。
メインはひたすら編集作業を行いますが
アシスタントはめちゃくちゃ辛い…
仕事ができるようになれば文字通りアシスタントとして編集素材を加工したりテロップを作成したりしますが、制作の方と一緒にお茶出ししたり資料のコピーをしたりと雑務を行うことが多いです。
またポストプロダクションで扱っているソフト、機材は専門学校でも教えていないソフトばかりなので新人はほぼほぼ未経験で仕事につきます。
アシスタントはメインの仕事を見て覚えろというのが一般的ですのでアシスタント作業がない時はひたすらメインの作業を見ています。
見ているだけがかなり辛いです…
飯は奢ってもらえる?
編集者は時間内に編集しなくてはいけないので昼食や夕食を取りにいく時間がありません。
そこで制作さんが昼食をケータリングして制作さんと一緒に昼食を取ります。
費用は制作さん持ち
編集者は昼食代を支払いません。
編集室には各種ケータリングのメニュー表がファイリングされているので、そこから選んでケータリングするということが多いです。
ブラック?超激務?
映像の編集というのは時間がかかるもので
30分番組でも朝の10時から作業を開始して0時過ぎまでかかるということは多いです。
私がポストプロダクションで働いていたときは30分番組でも3時4時まで作業は割と多かったです。
これだけでかなりブラックな感じしますよね?
近年の働き方改革の流れで早番遅番というように交代することもあるそうです。
また電車があるうちにアシスタントは帰らすなど、過酷な労働環境を変えようとしているとのことです。
ただ私がポストプロダクションでに勤めていたときは
月に250時間~270時間働いていました。
300時間を越えた月もありましたが…
週に2日か3日帰れないのが当たり前でしたね。
微々たるものですが残業代が出ていたのでよかったですがね。
あらかじめ朝までの作業になるとわかっていれば
次の日は「明け休み」をいただけたので週5日まるまる働かないことも多かったです。
ポストプロダクションの求人は?必要なスキルは?
ポストプロダクションは
常に人材不足です。
早番遅番制にしようとすると人も増やさないといけないので当然ですが
人材不足なので求人は常にあるものと考えていいです。
必要なスキルはというと
ポストプロダクションで扱うソフトは個人では購入できない高価なものが多いので
未経験者が入ってきて覚えていきます。
特別必要なスキルはないですが、映像知識があった方が入ってから苦労はしません。
あとは健康な身体と健全な精神があれば大丈夫です。
必要なのはスキルではない
健康な身体と健全な精神
映像の知識は絶対つく
私が勤めていたポストプロダクションを基に説明してきましたが
過酷な労働環境だったので(今はかなり改善されています)当時は辛かったですが
映像の知識は絶対に身に付きます
収録機器、カメラやマイクから編集ソフト、各種フォーマット、コーデック等々
映像に関わる知識を徹底的に叩き込まれます。
映像関係のキャリアのスタートがポストプロダクションで良かったと思うことが今でも多いです。
映像関係での就職を考えている人はポストプロダクションへの就職も考えてみてはいかがでしょうか?