Premiere ProやAfter Effectsで動画編集をしていく中で多くの方が見た目で判断して切り替えているであろうレイヤーと描画モードについて解説していきます。
正直な話、理解ができなくても見た目で判断すれば簡単な動画編集はできるので問題ないです。しかしVFXに興味がある方、動画、映像のプロになりたい方は知っておいた方がいいですね。
リアルな合成には正しい知識がないとできないですから…
あと知らないで見た目で判断してレイヤーを重ねていく結果無駄にレンダリングがかかる場合が多いですね。
レイヤーとは
レイヤーは、コンポジションを構成する要素です。
レイヤーは階層と訳されるのですが見た目と同様に重ねていけば上に位置されるものが上に表示されるので直感的に扱えるでしょう。
直感的に扱えますが理解を深めるために以下の2点は知っておきましょう。
色は数値で計算されている
8ビットの場合は2の8乗の256で色を表しています。
Red Green Blue 加法混合で、それぞれ0〜255までの数値で色を表現しています。
ちなみにRGB全て0が黒、255が白です。
32ビットの浮動小数点では黒が0で白が1です。
8ビットとの違いは小数点以下の数値で扱うことと0以下、1以上も扱えることです。
RGBA アルファチャンネルの概念
アルファチャンネルとは透明度の設定です。
白黒で表現されていますが黒は透明、白が不透明です。
RGBとアルファチャンネル
色と透明度の情報をレイヤーは持っているということをまずは理解しましょう。
描画モードとは
描画モードは合成の計算式の違い
合成とは四則計算と条件で計算するものです。
加算 A+B
減算 A-B
乗算 A×B
除算 A÷B
RGBAが数値で表されていると説明しましたが
レイヤーの描画モードとは
この数値をどのような計算の処理をしますか?
ということです。
描画モード通常は
前景=A 前景アルファチャンネル=a
背景=B
とすると以下のような計算式で成り立っています。
A+B(1-a)
背景を前景の不透明部分で引いたものに前景を乗せたものという計算になっています。
Nukeの場合は計算式が表示されるのでわかりやすいです。
After Effectsの描画モードの計算式がNukeと全部同じわけではないとは思いますが
(ほとんどの描画モードは、ソースレイヤーのアルファチャンネルではなく、カラー値のみを変更だったり、乗算モードが乗算した後にピクセルの最大値で除算した結果だったり)参考にしてみてください。
After Effectsの描画モード
After Effectsのマニュアルには描画モードは8カテゴリに分類されているので
こちらも確認してみてください。
以下の説明を覚えておくだけでもどの描画モードを選択すれば望んだ結果が得られるかが想像しやすいと思うので作業が早くなることでしょう。
描画モードについてそれぞれの説明もあるので一度ぐらいは目を通しておくことをおススメします。
「通常」カテゴリ
「通常」「ディザ合成」「ダイナミックディザ合成」ソースレイヤーの不透明度が 100%未満でない限り、ピクセルの結果色は、元のピクセルの色の影響を受けません。「ディザ合成」描画モードでは、ソースレイヤーの一部のピクセルが透明になります。
「減算」カテゴリ
「比較(暗)」「乗算」「焼き込みカラー」「焼き込みカラー(クラシック)」「焼き込みリニア」「カラー比較(暗)」
これらの描画モードでは、色が暗くなる傾向があります。一部の描画モードでは、ペイント時に色素を混ぜ合わせるように色が混合されます。
「加算」カテゴリ
「加算」「比較(明)」「スクリーン」「覆い焼きカラー」「覆い焼きカラー(クラシック)」「覆い焼きリニア」「カラー比較(明)」
これらの描画モードでは、色が明るくなる傾向があります。一部の描画モードでは、投影された光を混ぜ合わせるように色が混合されます。
「複雑」カテゴリ
「オーバーレイ」「ソフトライト」「ハードライト」「リニアライト」「ビビッドライト」「ピンライト」「ハードミックス」
これらの描画モードでは、ソースカラーと基本色のいずれかが 50%グレーよりも明るいかどうかによって、これらの色に異なる処理が実行されます。
「差」カテゴリ
「差」「差(クラシック)」「除外」「減算」「除算」があります。これらの描画モードでは、ソースカラーと基本色の値の差に基づいて色が作成されます。
「HSL」カテゴリ
「色相」「彩度」「カラー」「輝度」
これらの描画モードでは、色の HSL(色相、彩度、輝度)の 1 つまたは複数の要素がそのまま基本色から結果色に適用されます。
「マット」カテゴリ
「ステンシルアルファ」「ステンシルルミナンスキー」「シルエットアルファ」「シルエットルミナンスキー」
これらの描画モードでは、ソースレイヤーが、その下のすべてのレイヤーのマットに変換されます。
描画モードとレイヤースタイル
https://helpx.adobe.com/jp/after-effects/using/blending-modes-layer-styles.html
リアルな合成をするためには
リアルな合成をするためにはリニアワークフローをする必要があります。
リニアワークフローを簡単に説明すると
写真や映像は補正がかかっているので補正を外して合成してから補正しましょうということです。
我々は日頃、見やすいように目と脳で補正してから認識しています。
暗い部屋で見る光は明るく感じ、同じ光量で明るい部屋では明るく感じないというように同じ光量でも感じる明るさは違ってきます。
映像は人間が感じるように補正することでデータを圧縮しており(データサイズがかなりコンパクトになる)それをディスプレイでの補正で補正前と同じように見せています。
リアルな合成とは現実世界と同じように計算をしていくことなので補正をかけられる前の状態にしてから計算しておきましょう。というのがリニアワークフローです。
知覚ではなく物理的に考えましょうってのがリニアワークフロー
スクリーン合成は明るい箇所だけが適用されるので安易に使いがちですが
リニアワークフローでリアルな合成を考えると
光るものは加算での合成が正しく
煙のエフェクトは通常で合成するのが正しいので
スクリーンでの合成は間違いです。
最後に
少しでもレイヤーと描画モードについての理解が深められたでしょうか?
VFXに興味がある方、動画、映像のプロになりたい方は知っておいた方がいい知識ですが私の知り合いのモーショングラフィックデザイナーでこの辺の知識を理解していない人もいます。
- レイヤーは要素を分けるもの
- 描画モードは見た目でいい感じのもの
といった具合で考えているようです。
合成の分野に進む人以外は「何となく」でも大丈夫ですが
作業していて上手くいかないことがあった時に思い出してみてください。